愛してる?

第五回

博文は家路を急いで深夜の住宅街を歩いていた。

仕事が忙しくて家に帰るのがすっかり遅くなってしまった。

何とか終電が間に合ったのが幸いだった。

とにかく早く帰って寝たかった。

部屋の前に誰かがしゃがみ込んでいた。

「どなたですか・・・?」

博文は怪訝そうに訪ねた。

近づいて見るとそこにしゃがみ込んでるのは京子だった。

「何やってるんだよぉ・・・おめぇは・・・」

声をかけたが京子は反応しなかった。

どうやらかなり酒を飲んでるようだった、辺りはかなり酒臭かった。

「仕方ねぇなぁ・・・・」

ぼやきながら博文は京子を抱き抱えて部屋に入った。

早く寝ようと思ってたのにベットは京子に占領されてしまった。

博文は仕方無くシャワーを浴びる事にした。

京子の奴・・・何があったんだろう?

たぶん・・・守と亜沙子の結婚が原因なんだろうけど・・・・

博文はぼんやりとそんな事を考えながらシャワーを浴びていた。

ガシャァァーーーン!!

台所の方から凄い音がした。

博文はバスタオルを腰に巻いて慌てて風呂場から飛び出た。

台所では京子がしゃがみ込んでいた。

辺りにはグラスやらお皿やらが割れていた。

「何やってんだよぉ?!」

博文が叫んだ。

「ごめん・・・水が飲みたくなって来たんだけどフラついちゃってコケちゃった」

京子はそう言って近くに散らばってるガラスの破片を拾おうとした。

「いいよ・・・危ねぇから・・お前は大人しく寝てろ!後は俺がやるから・・・・」

「ごめんね・・・・」

そう言って京子は大人しくベットの方に行った。

博文は粗方片づけてグラスに水を注いで京子に持って行った。

「ほら!」

そう言ってグラスを京子に渡した。

「ありがとう・・・」

京子は一気に水を飲んだ。

そして博文の格好を見て

「あはは・・・なんて格好してるのよ。」

「アホォ!おめぇが台所でコケるから急いで出てきたんだろうが・・・」

「そっか・・・ゴメンネ・・・てっきり私を襲いに来たのかと思った」

「バカたれがぁ!!ほんとに襲ったろうかぁ!?」

「いいわよぉ・・・一回5万円ね・・・」

「お前は商売女か?バカ言ってねぇで寝てろ!シャワー浴びたら送ってくから・・・」

京子は黙っていた。

「どうした?」

「今夜は独りになりたくないの・・・」

「いったい何があったんだよ?守達の事か・・・?」

「あのね・・・夕方・・守が来たのよ・・・・」

「え?!何しに??」

「この間ね繁華街で守達に会ったの・・・丁度荒れてるときに・・・・

 それで心配して来たみたい・・・お前が荒れてるのは俺が原因なのかって・・・」

「バカか!?あいつは・・・・で、なんて答えたんだよ?」

「よっぽどそうよ!!って言いたかったわ・・・でも言えなかった・・・・」

「そうだよなぁ・・・・それが普通だよ・・・・」

「なんかどうでも良くなっちゃって・・・飲み歩いてたの・・・途中で記憶無くなって・・・

 気がついたらここに居たの・・・・ゴメンネ迷惑かけて・・・・」

「らしくない事言うなよ今更・・・俺に迷惑かけるのはいつもの事だろ?」

博文は微笑みながら言った。

「そうねぇ・・・いつもいつも私は博文に迷惑かけてるわね・・・」

京子はうつ向いた。

そんな京子を見て博文は思い切って言った。

「あのさぁ・・・俺じゃダメか?俺じゃ守の変わりになれないか?」

「え?!」

京子は吃驚していた。

「俺は前からお前の事好きだよ!そしてこれからも・・・・」

「急にそんな事言われたって・・・・」

京子はかなり戸惑っていた。

博文はこんな事言うんじゃなかったと後悔した。

「そうだな・・・今のお前にこんな事言うのは反則かな・・・ごめん・・・

 今着替えてくるから・・・そしたら送ってくよ。」

そう言って博文は風呂場に行こうとした。

京子は博文の手を引っ張った。

「謝らなくちゃいけないのは私の方よ・・・あなたの気持ち気づかなかった訳じゃない・・・

 知っててあなたに甘えてたのかも知れない・・・・」

「もういいよ・・・」

博文は吐き捨てるように言った。

「ごめんね・・・守の事はもういいの・・・これからは博文だけを見て行くから・・・」

「できるのか?」

京子は博文に抱きついてきた。

「もう何も言わないで・・・」

そう言って博文にキスしてきた。

そしてそのまま二人は一夜を明かした。





つづく・・・