愛してる?

第四回

ピンポーン!

あの夜から数日後、守は京子の部屋にやってきた。

「はい・・・」

中から京子が現れた。

「よぉ!」

守が元気良く挨拶した。

京子は露骨に嫌な顔をして

「何か用なの・・・?」

「近くまで来たから寄ってみたんだ・・・・ちょっと話したいんだけど上がって良いか?」

「どうせ・・・嫌だって言っても上がるんでしょ?どうぞ・・・」

京子は守を部屋に上げた。

「で・・・話しって何?」

奥からコーヒーを持ってきながら京子は聞いた。

「俺が言うのも変だけど・・・最近おまえが荒れてる原因って俺のせいか?」

コーヒーカップを持った京子の手が止まった。

なんとか平成を装って静かにカップを置いて言った。

「守が原因ってどういう事?私があなたの結婚にショック受けてるとでも言いたいの?」

「亜沙子がそうじゃないかって心配してるもんでさ・・・・」

また京子の動きが止まった。

それでも平静を保ちながら京子は静かに言った。

「自惚れないでよ・・・・この間荒れてたのは仕事が旨くいかなかったから・・・

 あなた達の結婚には関係無いわよ!!」

「そうだよなぁ・・・俺もそんな筈無いって言ったんだよ。

 亜沙子も結婚が決まってボケてんだなぁ・・・幸せボケって奴かなぁ??

 バカな事聞いて悪かったなぁ・・・・やっぱお前と話せて正解だったよ・・・・」

京子は喉まで出かかった言葉を押し殺した。

守はそんな京子の表情なんか気づきもしなかった。

そして安心しきって帰った。

守が帰ってから更に落ち込みが激しくなった。

何であんな強がりを言ったんだろう・・・・

せっかく守が心配してきてくれたのに、なぜ素直に好きだって言えなかったのか・・・?

それは守の後ろに亜沙子の影が見え隠れしてたからである。

今までは亜沙子に対して女としてライバル視した事は一度も無かった。

気持ちのどっかで亜沙子には女としては負けないと言う自信があった。

しかしそれは間違いである事に初めて気がついた。

守の心を射止めた事もそうだが・・・それだけでなく自分の気持ちを気づいたばかりか

その事を守に話した自信に驚異すら感じた。

もしも自分が逆の立場だったら絶対にそんな事を守には言わない。

いや・・・言えなかったと思う。

もしかして守が心変わりするんじゃないかって心配が先に立っただろう・・・

それが出来た亜沙子に京子は負けたと思った。

たぶん亜沙子には自分は驚異にすらならなかったのだろう。

そんな事を考えてたら涙が止まらなくなってきた。

もう自分なんかどうなっても良いと思った。




つづく・・・