第6話

それからしばらくはロボット製作に追われる毎日だった。
俺は仕事終わってから、ロボットの部品製作をやっていた。
仕事もそれなりに忙しかったので、仕事後の作業するのは
きつい筈なのだが全然苦にならなかった。
むしろ仕事終わってからやる、その作業が楽しみになっていた。
製作を始めてから4人揃って会う事は少なくなっていたが、
仕事帰りにオグケンが工場に寄って加工部品の出来具合を確認に来たり、
守が調達した部品を届けに来たりしていた。
中村は相変わらず突然現れて、くだらない事言って帰っていく。
そうこうしながらもロボットは少しずつ形になってきた。
もちろん俺一人の力ではない、オグケンや守の協力があっての事だ。
たぶん、中村の力も・・・
これならば、近々試運転が出来そうだな。
そう思い、工場に集まるようにみんなに連絡を入れた。
連絡をいれた次の日の夜、みんなが工場に集まった。
「いよいよ完成か?」
守が嬉しそうに言った。
「完成かどうかは今日の試運転次第だ。」
俺はロボットを机の上に置いた。
「うわぁ・・・図面と同じだぁ!」
中村が叫んだ。
「あたりまえだろ・・・」
俺は呆れて言った。
「ドキドキしますね。」
オグケンも興奮していた。
「それじゃ、電源を入れるね。」
俺はコントローラの電源を入れてからロボットの電源スイッチを入れた。
そしてゆっくりとコントローラのスティックを動かした。
ロボットはゆっくりと動き始めた。
「動いたぁ!」
守が叫んだ。
「ホントに・・・僕達がロボット造ったんですね・・・」
オグケンが感慨深く言った。
俺は工場の中をロボットを歩かせてみた。
微妙に動きがギクシャクしていたが、ちゃんと歩いていた。
確かに・・・造ったんだ・・・ロボットを・・・
俺も感動していた。
守も中村も嬉しそうだった。
「よっしゃぁ!!これで優勝狙おうぜ!!」
守が言った。
「ダメですよ!勝つためにはもう少し滑らかに歩かせないと・・・」
そう言ってオグケンがコントローラーを持ち、自分でも動かしてみた。
「あっ!確か・・・“振動しない脚構造”って言う資料が競技会のHPにあったわ。」
中村が言った。
「分かりました。見てみます。」
オグケンが言った。
「そう言えば肝心なこと決めてなかったよ。」
突然、守が言った。
「なんだよ?」
俺が聞くと
「名前・・・ロボットの名前だよ!」
守が答えた。
「あぁぁ・・・・」
みんなの声が揃った。
そしてしばらく沈黙が続いた。
それぞれが考えているのだろう。
「TMMK1号・・・」
オグケンがつぶやいた。
「何それ?」
中村が聞いた。
「高志のT、守のM、真紀子のM、謙三のKでTMMKです。安易ですけど・・・」
オグケンが説明した。
「みんなの名前の頭文字かぁ・・・良いじゃない。」
守は気に入ったようだ。
もちろん俺も気にいった。
「それでいこうぜ!」
俺の言葉にみんなもうなずいた。
「勝つ為には、もっと滑らかに動かすようにしたいんで、もう一度機構を見直してみますね。」
オグケンが言った。
「了解!DXFデータをメールしてくれればすぐに部品を作るから。」
俺が言うと
「なんか、本気で優勝目指さねえか!?」
守が言いだした。
「初出場で優勝・・・」
中村がニヤニヤして言った。
なんか盛り上がってきたな・・・
俺もなんか優勝出来そうな気がしてきた。
「よっしゃぁ!やろうぜ!!」
みんな興奮していた。