第3話

日曜の朝、と言っても限りなくお昼に近い時間に携帯で起こされた。
慌てて携帯に出ると、いつもお世話になっている機械加工屋の部長だった。
「どうしたんですか、日曜日に電話くれるなんて?」
俺が聞くと
「ちょっとお願いがあるんだけど・・・」
「なんです?」
「レーザ加工をお願いしたいアルミの部品があるんだけど、急いでやってもらえない?」
まだ少し寝ぼけた頭をフル回転して、今日の予定は特に無い事を確認してから
「良いですよ。会社の方に来てくれれば、すぐやりますよ。」
そう答えると
「それじゃ今から向かうわ。30分ほどで着くから・・・・」
そう言うと部長は電話を切った。
相変わらず、慌ただしい人だ。
けど、部長の行動力のおかげで うちにも色んな仕事紹介してもらっているのだ。
さて、今度はどんな仕事取ってきたんだろうか?
うちにも少しは回ってくるかな?
などと、ちょっとスケベ心を持ちながら支度して会社に向かった。
会社で待つ事10分ほどで部長はやってきた。
「休みの時にすまないね・・・・」
開口一番部長は頭を下げた。
「いえいえ・・・どうせ一日寝ているだけですから・・・」
と俺が言うと
「良い若い者が折角の休みにゴロゴロしているなんて、もったいないぞ!」
「いやぁ・・・・」
「一緒に遊びに行く彼女とか居ないのか?」
そう言われ、不意に中村の顔が浮かんだ。
何想い浮かべてんだよ・・・・
と自分に突っ込んでみた。
「それよりレーザ加工する品物は・・・・?」
俺は、話を本題に戻した。
「そうだそうだ・・・」
そう言って部長は車に戻って行った。
工場に戻ってきた部長は、機械の昆虫みたいなモノを持ってきた。
「ロボットですか・・・?」
俺が聞くと
「そうロボットだよ。一昨年から社員研修でロボット競技に出場させてんだ。
 これは去年造ったロボットなんだけど、今年の新人に明日見せようと思ってね。
 今朝久しぶりに動かしていたら暴走して脚一本壊してしまったんだ。
 明日、新人達に見せなければいけないので、急いでこれを造り直してもらおうと思って、
 松本くんに電話したんだよ。」
そう言ってアルミの部品を見せてくれた。
その部品を見事に変形していた。
これは治せそうにないな・・・
「DXFのデータはあります?」
俺が聞くと
「ここにあるよ」
そう言って部長はUSBメモリーを差し出した。
「そこに座って、ちょっと待ってて下さい。」
そう言って、俺はすぐにパソコンにDXFファイルを取り込み、レーザー加工機用のCAMデータを作った。
そしてアルミ板をレーザ加工機に乗せて、加工した。
30分もかからない作業だった。
出来あがったレーザ加工品を部長に渡した。
「でも凄いですね。ロボットを造るなんて・・・」
そう言うと
「このロボットは金属加工が出来れば何とか造れると思うよ。
 何しろうちの新人たちが造っているんだからね。」
俺はそのロボットをマジマジと見ながら
「そうですか?俺が造れって言われても造れる自信無いですよ。」
と言った。
「まぁ多少は機構学の勉強とかは必要だけど、そんなのはインターネットで調べればすぐ分かるよ。
 ようは造る情熱があるかどうかだ。」
「造る情熱ですか・・・?」
「社員研修にこんな事やっている理由がそこなんだよ。
 製造業ってクリエイティブな仕事だと私は思っている。
 そしてクリエイティブな仕事ならば当然創造力がなくちゃならない。
 けど今は機械が良くなっていてプログラムさえあれば誰でも製品を作れる。
 だから、作業者が自分で考えずに機械を動かしている傾向になっている。
 でもそれじゃ作業者が機械に使われているようなものだよ。
 そんなのクリエイティブな仕事とは言えない。
 だから、少しでも創造力をつけてもらえるようにって思ってね。」
凄いと思った。
俺は自分の仕事に対して、そんな風に考えた事無かった。
クリエイティブな仕事って言葉に痺れていた。
今まで俺は創造力をもって仕事していたんだろうか?
頭の中でそんな自問自答していた。
なんか俺もロボットをつくってみたくなった。
仕事の為とかじゃなく、自分の為に・・・
「その競技会って俺でも参加出来ますか?」
そんな言葉が自然と口から出ていた。
「もちろん!」
部長は笑顔で答えてくれた。
それから、部長にロボット競技について詳しく説明を聞いた。

これが、この間オグケンが言っていたワクワクドキドキな事になれたらいいな・・・
そして、このワクワクドキドキな事にあいつらを巻き込んでやろうと思っていた。