第14話

運の競技は、スタート前にリング脇にあるスイッチを押し、
自分の当たりナンバーを決めるのだ。
どうやら、そのスイッチを押すことでランダムに3つの数字が決まるようだ。
なんかそんなシステムを作ってあるのだろう。
そして、正方形のリング上にある、六角形に配置された箱を倒すのである。
3つ倒したタイムが早い順にポイントは高くなるが、当たりのナンバーと
倒した箱のナンバーの正解数によって得られるポイントが変わってくる。

「もう、倒す箱のナンバーは決めたのか?」
リング脇で出走待ちしていた俺は、中村に聞いた。
「当たりナンバーを決めるスイッチを押してから決めるわ。」
「なんだ・・まだ決めていないんだ。」
と俺が言うと
「当たりナンバーが決まった瞬間に頭に浮かんだ数字にするのよ。」
中村はニコニコしながら答えた。
「え?!お前、そういう能力あるのか?」
俺は驚いて聞いた。
中村は小声で
「そうなの・・・秘密よ。誰にも言わないでね。」
真顔で言った。
「分かった・・」
俺も小声で、そう答えると中村はプッと吹き出して
「な訳ないでしょ!!何信じているのよ・・・バカじゃないの。」
と、大笑いした。
俺はカチンときて
「バカとは何だよ!」
と怒鳴りつけた。
すると
「そんなに怒らなくても良いじゃない、ちょっとした冗談なのに!」
と中村は逆ギレした。
「バカとか言われてたら誰だって怒るだろ!」
と俺が反論すると
「そんな事で怒るなんて器が小さいね!」
とか、ほざきやがった。
そんな事やっている俺たちに、スタッフがすまなそうに
「すいません・・・そろそろ・・出走なので準備してもらえますか?」
と言った。
その瞬間、俺たちは頭に昇った血がひいて
「スミマセン・・・」
と平謝りした。
そして俺はすぐにスタート場所にTMMK1号を置いた。
中村もスタッフに頭を下げてから、急いで当たりナンバーを決めるスイッチを押した。
リングの反対側に居た守が、呆れた顔をして
「バーカ!」
と言っていた。

気を取り直し、スタッフに準備できましたと伝えた。
そしてスタッフの号令で、競技はスタートした。
まず、TMMK 1号は正面右手に有った2番と書かれた箱に向かった。
そして腕を使って箱を倒した。
審判が倒れた箱の番号を確認して、手元の端末を見て白い手旗を上げた。
正解だったようだ。
「よし!」
俺は、思わず声が出た。
中村は、審判の判定に関係なく、すぐにTMMK 1号はバックさせて
6番と書かれた箱に向かわせた。
そのままTMMK1号を突進させて箱を倒した。
審判は箱の番号と端末を見比べて、今度は赤い手旗が上がった。
不正解だ。
「くそ!」
俺は悔しがった。
3つめは、ちょうど機体の正面にあった3番と書かれた箱を目指していた。
箱に近づき、手際良く腕を使って最後の箱を倒した。
競技終了となりタイムが記録された。
俺は審判をじっと見つめていると審判は白い手旗を上げた。
「よし!2個正解だ!!」
俺は言葉が出た。
そしてリング脇の計測時計を見ると10秒23だった。
「ちょっと時間かかっちゃった・・・」
中村はタイムに不満のようだった。
「スピード競技じゃないんだから、上等だよ!」
俺が言うと
「正解数は?」
と聞いてきた。
「2個。上出来だよ!」
俺が答えると
「1個間違えたんだ・・・」
と悔しそうに言った。
「まぁ・・とにかくお疲れさんでした!!」
そう言って俺は中村とハイタッチした。
とにかく、やれる事はやった。
気持ち的には晴れ晴れしていた。
後は結果待ちだ。
みんなで、これだけ頑張ったんだからきっと予選突破できるだろう!
そう信じて、控室に向かった。