愛してる?

第一回




元麻布にあるイタリアンレストラン、田川守はその一郭にある

ウエイティングバーのカウンターに座っていた。

今日は久々に楽しい仲間に会うために、そしてみんなにある報告をする為にである。

ギィー・・・

少し重めのバーのドアーを開けて三沢亜沙子が入ってきた。

「ごめんなさい・・・待った・・・??」

亜沙子はすまなそうに言った。

「まだ・・約束の時間には早いよ!」

守は腕時計を指さして言った。

まだ約束の時間は過ぎてはいない。

たまたま仕事が早く終わったので早めに来て一人で飲み始めてたのだ。

亜沙子は本当に女らしい子だ。

それに気が利いて面倒見が良い。本当に良い子である。

「おまたぁぁ!!」

騒々しく店に入ってきたのは松村京子である。

その後ろから斉藤博文がついてきた。

「相変わらず騒々しいなぁ・・・・」

守が少し困った顔して言った。

「電車の中でもこんな調子なんだぜ!」

博文が笑いながら言った。

「だって・・・久しぶりにみんなに会えるだもん・・盛り上がらなくっちゃ!!」

京子は守と博文の言う事なんか気にせず飲物を頼み始めた。

「ったくぅ・・・・」

守は呆れた顔をした。

「まぁまぁ・・・京子のやる事をイチイチ気にしてたら身が持たないよ!」

博文が言った。

「確かになぁ・・・・」

守もあきらめた顔をした。

「何よぉ!?それぇ...」

京子は少しふくれた顔をした。

亜沙子はそんな三人のやりとりを優しい笑顔で見つめていた。

何事にも真っ直ぐで筋の通らない事が大嫌いな守。

いつもいつもトラブルメーカーで周りを引っかき回す京子。

そんな京子に文句を言いながらも良い様に振り回されている博文。

そしてそんな三人をニコニコしながら静かに見つめている亜沙子。

これがこの四人のいつも関係である。

元々は守と博文が、京子と亜沙子がそれぞれ幼なじみだった。

それが3年前のスキーツアーで偶然一緒になったのがこの四人組の始まりだった。

最近はそれぞれが忙しくなり会う機会が少なくなっていた。

「それじゃ・・・久しぶりの仲良し四人組に乾杯しましょうか?」

京子はバーテンのジェイクにグラスを用意させた。

「こういう賑やかしには、おめぇ・・・ぴったりだな」

守はグラスを受け取りつつ言った。

「それじゃ・・まことに僭越では御座いますが・・・・」

京子がグラスを片手に挨拶を始めようとした。

「長い挨拶はよいから・・・早く飲ませろ!!」

守はチャチャを入れた。

「ったくぅ・・・これから良い話しをしようと思ったのに・・・それじゃ乾杯!!」

そしてレストランの方へ席を移して宴は始まった。

「それで・・・なんだよ?急に召集かけたのは・・・」

博文が守に聞いた。

「そうそう・・・守が集まろうなんて言うの珍しいじゃん」

京子も聞いた。

「京子が言い出すなら解るけど・・・・」

笑いながら博文が言った。

京子は博文を睨んだ。

「実は・・・」

守が話し始めた。

「俺さぁ・・・年貢を納めようと思うんだ・・・・」

「年貢?!もしかして・・・結婚?」

博文が吃驚して言った。

「嘘!?誰と・・・??」

京子も驚いていた。

「そう・・・結婚しようかと思ってさ・・・まだ当人同士の話しの段階だけどね・・・」

守は照れくさそうに言った。

「ヒョェェェ!!いつのまにそんな相手見つけたのよ!?亜沙子知ってた?」

京子は亜沙子に言った。

「うん・・・」

亜沙子も恥ずかしそうに頷いた。

「えぇー!?亜沙子には話してたんだ・・・・」

京子は責めるように言った。

守は京子の突っ込みに困ってる亜沙子に助け船を出した。

「だって・・・こいつだもん・・・嫁さん・・・」

「えぇぇぇ!!」

博文と京子は二人揃って叫んだ。

「じゃぁ・・・守と亜沙子が結婚するって事か?」

博文が言った。

「そう言う事だ・・・・」

守が答えた。

「いやぁぁ・・・吃驚したなぁ・・・いつのまに付き合ってたんだよ?」

博文が守の横っ腹をつっついた。

「まぁ・・・ボチボチとなぁ・・・・」

守は頭をかきながら照れくさそうに言った。

「それじゃ・・・二人のこれからの幸せを祈って乾杯しましょう。」

京子が言った。

「それじゃ乾杯!!」

幸せ一杯の守と亜沙子・・・そしてそんな二人を嬉しそうに見つめる博文・・・

しかし京子だけは敵意をむき出しに亜沙子を見つめていた。




つづく・・・