第4章 厄日の結末




「う〜ん・・・」

妙な機械音で俺は目を覚ました。

俺は体を起こそうとしたが、起こせなかった。

どうやら俺はベットの上で手枷足枷をされていた。

隣を見ると同じようにサーヤも拘束されていた。

まだ気がついてないようだ。

 「気がついたようだね」

Drローゼの声がした。

 「Drローゼか?いったいどうする気だ?」

 「お前は私の最高傑作のα1を倒した。

  だからお前を調べて、お前の細胞を使ってもっと強力なα2を作り出す。」

 「そんな事させるか!!」

 「お前の細胞とプリンセスの細胞を使えば最高のバイオ兵器が出来るはずだ。」

 「畜生!!」

俺はもがいたがどうする事も出来なかった。

 「さてまずは解剖をしようか。お前のパワーの秘密を調べさせてもらうよ!」

 「よせ!!そんな事をしたら俺の細胞を使えないぞ!!」

俺は何とかDrローゼに解剖を思い留まらせようとした。

 「ははは そんな心配は無い。

  髪の毛一本有ればクローンを作っていくらでもやり直しは出来る。」

Drローゼは俺の言う事など無視して機械を操作した。

俺の上にレーザーメスが現れた。

 「やめろ!!」

俺は叫んだ。

だがDrローゼはやめなかった。

 「Drローゼ、私をやりなさい。

  この地球人は無関係よ!」

サーヤは気がついた様だ。

 「お気づきになられましたかプリンセス。

  ははは 御心配なさるな次はあなたですから。」

 「Drローゼ!貴様!!」

俺は叫んだ。

しかし所詮無駄な叫びだった。

もはやここまでか・・・

俺は覚悟を決めた。

どうやら俺も霊子の所に行きそうだ。

と、突然部屋の壁がぶっとんだ!!

一緒にDrローゼも吹っ飛ばされた。

壁の穴から人が入ってきた。

土煙がひどくて、顔までは解らなかった。

 「誰だ!?」

俺は聞いた。

 「結局 私がいないとダメね!!」

あの声は・・・

 「霊子・・・お前生きてたのか・・・?」

 「勝手に殺さないでよ!」

間違いなく霊子だった。

霊子はショックガンを抱えて立っていた。

 「今、自由にしてあげるわね」

霊子は俺達を解放してくれた。

 「霊子・・・よかった・・・」

俺は思わず、霊子を抱きしめた。

 「やめてよ・・・恥ずかしいじゃない・・・」

霊子は照れながら言った。

 「あっ ごめん・・・。だけどどうして・・・?」

俺も慌てて霊子から離れた。

 「たぶんサイコバリアーとショックガンのパワーが同じだったんでしょ。

  だから気を失った程度で済んだのよ。」

サーヤが説明した。

俺はDrローゼを捕まえて

 「こいつどうする?」

まだ死んではいなかった。

 「私たちの星に連れて帰るわ!

  こんな悪党でも殺す訳にはいかないでしょ?」

サーヤは腰から筒を出して、Drローゼの首に当てた。

 「なんだそれ?」

 「こうして置けば、絶対に気がつかないわ!一時的に仮死状態にしておくの。」

 「とにかく帰りましょ!私 疲れたわ!!」

霊子が言った。

 「そうだな・・・俺もヘトヘトだよ!」

俺達は帰路についた。

途中サーヤの宇宙船に寄って、Drローゼを降ろした。

とにかく全員無事で、なおかつ霊子は生き返ったのだから気分は最高だ。





あれから1週間が過ぎた。

警察には匿名で電話したので、α1に捕まった人達は全員救助されたそうだ。

まだ入院してる人もいるそうだけど、とりあえず全員命には別状無かった。

 「霊子・・・もう体は大丈夫か?」

霊子と俺は、二人で買い物に出かけた。

 「ダメ!」

 「え?」

 「どこかの誰かさんが傷物にしてくれたからお嫁に行けない!」

霊子は笑って言った。

 「それって傷有る無しの問題か?それ以前の問題じゃないか?」

俺も負けずに言い返した。

 「何それ?何処が問題なのよ?美貌は申し分無いでしょ?性格は良いし・・・」

 「けっ!自分の事って解らないもんだな・・・」

 「よく言うわ。思わず私を抱きしめたのは誰かしら・・・」

 「あの時は・・・」

何気なく見た電柱に男が隠れた。

また誰か尾行してるのか?

まさかDrローゼに仲間が居たのか?

それとも・・・

俺は辺りの様子をうかがった。

間違いなく俺達を見張ってる。

 「どうしたの?」

霊子も俺の態度で何か起きた事を感じとったようだ。

 「どうも・・俺達は見張られてるようだ」

俺は小声で答えた。

霊子も辺りの様子をうかがってるようだ。

と、突然霊子が電柱に隠れた男に近づいて行った。

 「おい・・・霊子・・・」

俺は声を掛けたが、霊子は構わず行ってしまった。

 「出てきなさいよ!そこに居るのは解ってるんだから・・・」

霊子に言われて男が出てきた。

 「マキちゃん・・・大丈夫よ!」

 「お前の知り合いか?」

 「お嬢様、旦那様も奥様も心配してます。どうか家にお帰り下さい!」

男が霊子に向かって言った。

 「お嬢様???お前が・・・」

 「実は家ね・・奥多摩の山持ってるの

  もっとも私の曾お爺さんの時代に買い集めたものだけどね・・・

  人は家の親父の事を奥多摩の山林王なんて言うけど、

  財産を守る事しか頭にない人よ!

  私の気持ちなんてこれっぽっちも解らないのよ!

  勝手に私の結婚相手も決めちゃうし・・・

  だから私は家出したのよ!!

  どうせ心配もしてないでしょうけど・・・」

 「そんな事はありません!

  旦那様も心配なさって私たちにお嬢様を探させたんですよ!」

 「霊子・・・とりあえず一度帰ってあげたら。もう一度よく話し合えよ!!

  俺達は頑張ってα1を倒せたじゃないか!

  だからお前だって頑張ればきっと親父さんも解ってくれるよ!

  逃げたって逃げとうせるものじゃないだろ・・?」

 「わかったわ!やってみる・・・サーヤが帰るまでには戻ってくるわ!!」

霊子は男達と一緒に帰って行った。





サーヤが自分の星に帰る日が来た。

あれから霊子から連絡はなかった。

やっぱり・・・親父さんを説得できなかったのか・・・

 「霊子は来ないみたいね・・・」

サーヤも霊子の事は気に掛けてたようだ。

 「なぁに・・そのうちひょっこりやって来るよ。」

俺は無理に笑顔を作った。

俺が一番来れない事は解ってるだけに・・・

 「それじゃ私行くわ!霊子によろしくね!!」

 「あぁ・・かならず言っておく。

  気をつけてな!!また地球に遊びに来いよ!!

  いつでも俺は歓迎するよ!!」

 「マサノリも元気で!!」

 「ちょっと待ってぇ〜!!」

遠くから霊子の声が聞こえた。

 「霊子だ!!おーい 遅いじゃないか!!」

俺は嬉しくてつい大声を出してしまった。

 「ごめん ごめん」

 「で、親父さんと和解したのか?」

 「ダメよ!だけど結婚だけは諦めさせた。

  そんな事したらまた家出するって脅しかけた。」

 「ったく・・もうちょっとマシな言い方出来ないのかよ!!」

霊子はサーヤに近づいて行って

 「サーヤ・・元気で!!あなたと会えてよかったわ!!」

急に霊子の奴泣きそうになった。

 「私もよ!霊子・・・もっと色々と話しがしたかった・・」

なんだか涙の別れになってしまった。

俺も思わず熱い物がこみ上げてきた。

 「なんだよ・・・今生の別れじゃないんだから・・・

  またサーヤだって遊びに来ればいいんだから・・・」

俺はわざとお茶らけて言った。

 「そうよね・・・サーヤ・・かならずまた来てよね!!」

霊子は涙声で言った。

 「必ず来るわ!!それじゃ行くわね!」

サーヤも泣きながら言った。

 「元気でな!!」

 「私は忘れないわ!!

  地球にはこんなに素晴らしい友人が居るって事を!」

 「俺達もだ!!それじゃまたな!」

 「サーヤ 気をつけて!」

サーヤは宇宙船の中に消えて行った。

俺達は少し宇宙船から離れた。

サーヤの宇宙船はゆっくりと浮上した。

そして俺達の上を一回旋回してから一気に空に消えて行った。

「行っちゃったわね・・・」

 「俺達も帰るか・・お前の家まで送って行ってやるよ」

 「それじゃマキちゃんの家までね!」

 「え?」

 「今度マキちゃんのとなりの部屋に越したのよ」

 「また家出か?あのな・・・ちゃんと親父さんと・・・」

 「ストップ!!そうじゃないのよ!

  この事を親父にちゃんと承諾させたのよ!!

  しばらく一人で暮らしてみるって。これを説得するのに苦労したわ」

 「そうか・・・それじゃまたしばらくうるさくなるな。」

 「本当は嬉しいくせに・・・素直じゃないんだから・・・」

 「よく言うよ!けど・・・ちょっとは嬉しいかな・・・」

俺の厄日はまだ続きそうだな

この先の人生でこんな波乱に飛んだ事は二度と起きないだろう・・・

まぁどんな事が起きても何とかなる自信はあるな。

二人で車の所へ戻ると、かなり日は沈んで来て薄暗くなってきた。

一番星も見え始めた。

 「あれ何かしら・・・」

霊子が言った。

またかよ・・・

俺は霊子が指さす方を見た。

見ると広告を付けた飛行船だった。

 「飛行船だよ!」

 「またUFOかと思ったわ。」

 「そんなに何度もUFOに遭遇してたまるか!」

二人で大笑いした。

 「さて帰るぞ!!」

俺達は車に乗り込んだ。


 
Fin